誰よりも遠くへ

川の流れに逆らって

コロナ危機(第一波?)を振り返って

 

 

はじめに

 

珍しくタイトルを最初に決めて記事を書いている。首都圏と北海道を除く地域で緊急事態宣言が解除され、東京都の感染者も一桁台に突入している。今や神奈川県の方が感染者が多い。主に院内感染だから地域性あんま関係ないって話も聞くけど。

僕は緊急事態宣言の発令された4月7日から1ヶ月半、不要不急の外出を控え、自室に引きこもって過ごしてきた。散歩にもほとんどいかなかったし、コンビニも数えるほどしか行ってない。必要なものはパート帰りの母親に買ってきてもらっていた。4月23日からはオンライン授業がスタートし、今日でちょうど一ヶ月が経つ。最後に大学に行ってから4ヶ月が経ち、気づけば冬は終わり、春も去ろうとしている。

20歳の春を、ひたすら外出を自粛し、実家に逼塞し、バイトもせず、彼女にもほとんど会わずに過ごした。「非日常がない」という日々が、何よりも非日常的であること。これは自明だ。僕はこの非日常をいかに過ごしたのか、ここにまとめておくことは、僕にとって価値のある行動だと考える。

いくつか項目に分けてみようと思う。政治の話は今日はやめておく。あくまで生活面にフォーカスを当てて、自分の体験、感じたことを書いてみようと思う。

大学のこと

僕は中央大学政治学を専攻している。うちの大学はコロナ流行によって春休みを2週間延長し、4月23日からオンラインという形で授業を開始した。当初はGW明けまでの実施だったが、一度5月下旬まで再開が延期され、その後春学期オンライン授業が確定した。キャンパス閉鎖の影響や学習環境整備の必要性が考慮された結果、全学生に5万円が一律給付されることも決定した。ありがとうございます。申込みは5月末、支給は6月中旬ごろを予定しているとのこと。詳細は公式HPを見てね。

僕はオンライン授業に対してそこまで否定的ではない。今まで大学で講義を受けていても、「これ、オンラインでいいだろ……」なんて講義はいくらでもあったし。何よりも電車に乗って通学しなくて良いというメリットは大きかった。僕は大学へ通うのに片道1時間半もかかるのだ。往復で3時間である。それがオンライン授業だとゼロになるのだ。さらに、オンライン授業の中にはオンデマンド配信型、つまりいつでも視聴できる講義もある。学校再開後も、一部の一方通行型講義は継続して導入すればいいのに、とすら考えてしまう。

一方で、図書館が使えないのは非常に不便だ。僕は普段、大学に通学している時期は週に3~5冊ほど本を借りていたし、なにより勉学に励む学生が集う図書館という空間は、学習スペースとして最高の環境だった。自宅では他人の目線がない分、効率はめちゃくちゃ下がる。緊急事態宣言が解除されたら、最寄り駅のタリーズくらいは行こうかな。本に関しては電子書籍も使えるし、通販でも調達できるので、意外と困らなかった。母親が専門書の費用をかなり負担してくれたので助かった。5月中旬以降は大学図書館の郵送サービスも使えるようになったため、専門書を取り寄せることが出来るようになった。早速僕は利用したけど、送料もかからないので非常に親切なサービスだと思う。図書館はもしかしたら6月以降開館するのかな?

自粛生活のこと

僕は元来、アウトドア派だ。性格は暗いくせに、じっとしていることが出来ない。昔から暇を見つけては遠くへ行ってしまう癖がある。僕は3月上旬に、このままでは旅行のできない時代が来てしまうと思い、急遽東北への小さな旅行にでかけた。仙台や平泉のほうを見て回ったが、すでにコロナに備えて営業を自粛しているゲストハウスもあった。本来であれば彼女と3月下旬に神戸旅行に行くことも計画していたけれど、関西圏の感染拡大に伴い中止することになってしまった。それからしばらくして、本当に外出のできない日々が始まった。

うちの家は兄弟も3人いて、「家族間で壁を作らない」とやらで個人の部屋がなかった。しかし自粛生活がスタートし、オンライン授業の実施も予定されていたことから、母親は急遽兄弟それぞれの部屋を模様替えして作ってくれた。僕の部屋は、もともと僕と妹の勉強部屋だった場所に作られた。断捨離して昔のものをたくさん捨てて、妹の机を新設の妹の部屋に移して代わりに僕のベッドを置いた。急ごしらえとはいえ、人生で初めて自分の部屋が貰えたことはとても嬉しかった。実際オンライン授業が始まった後、自分だけの空間があるというメリットは非常に大きいことを実感した。

僕の家は幸い、母親の努力もあって学習環境としては恵まれていた。好きな時間に寝起きして授業を受けることが出来たし、食事も比較的自由だった。5月以降、エアコンも自室に設置されたので、至れり尽くせりといった環境で自粛生活を送った。うちの家には、2羽のかわいいセキセイインコもいるので、癒しもあった。インコを通じて、あまりそりの合わない兄妹とも話すことが出来た。

読書のこと

オンライン授業がスタートするまでの間、いくつか本を読んだ。やることがないので、一日に1冊以上読んだ日もあった。特に印象的だったものを列挙していこうと思う。まずは安部公房の『けものたちは故郷を目指す』だ。終戦後の満州の荒野から、まだ見ぬ故郷日本を目指し、極限の飢餓や寒さと闘いながら旅をする少年の物語だ。この自粛生活の閉塞感と似た空気を感じたので、世界観に溶け込みやすかった。次に、アルザス人医師シュヴァイツェルの書いた『水と原生林のはざまで』だ。第一次世界大戦の時期に、アフリカのフランス領ガボンで現地人の治療に当たった医師の滞在記である。この時期のアフリカ世界というのは僕にはまったく馴染みのない世界だったので、とても面白かった。彼の「苦痛の烙印を押された兄弟団」に関する記述は、僕の心にじんと響いた。最後に、太宰治の『津軽』を挙げておく。この小説について詳しく語るとキリがないので控えておくが、近いうちに津軽、特に弘前は行ってみたいと思った。3月に駆け足で向かった東北旅行を、リベンジする形で弘前にいこうと思う。

新書もいくつか読んだけど、大東和重氏の『台湾の歴史と文化』は面白かった。著者の比較文学史的な研究に関する記述はもちろん、台湾の各都市に関する詳細な記述、先住民の歴史あたりはとても興味の持てる内容だった。海外渡航がまたできるようになったら、3週間くらいかけて台湾全土を回ってみたい。

 

すっかり長くなってしまったので、ここで前編として一度区切ろうと思う。後編では、音楽のこと、恋愛のこと、コロナ後のことについて書きたいと思う。